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Blockchain at Berkeleyの記事を徹底解説!トークン価値算定理論とその発展可能性

こんにちは!こじらせ東大女子(@icotaku_utgirl)です。

本日は、3月にBlockchain at BerkeleyのMediumブログに掲載された“Today’s Crypto Asset Valuation Frameworks”を日本語で解説していきたいと思います。

※原文はこちら

Blockchain at Berkeleyのメンバーである友人からこの記事を読むよう薦められ、「面白い!ぜひ日本語で解説を書きたい!」と思い始めてから早Xカ月、ようやく記事ができあがりました。

毎度ナマケモノですみませんm( . . )m

貨幣数量説やJカーブ理論などおなじみの理論に加え、従来の株式価値算定モデルの応用可能性を探っているのが興味深いです。

ぜひ最後までご覧ください!

従来のトークン価値算定理論

 

それでは早速、今日定番となっているトークン価値算定理論を四つご紹介します。

  1. 価値の保存理論
  2. 貨幣数量説
  3. クリプトJカーブ理論
  4. 対トランザクションボリュームネットワーク価値(NVT)理論

価値の保存理論

 

トークンの価値の保存手段としての役割に注目し、地球上に存在する「価値の保存」型資産の価値を参考にトークンの理論価格が算出できるとする説です。

おさらい:貨幣の三つの機能

  1. 価値の保存
  2. 交換の手段
  3. 価値の尺度

 

中でも、Stable Coinのように設計上安定した価値を持つトークンや、またはコミュニティの拡大に伴い価値の上昇が期待できるトークンは、投資家にとって魅力的な「価値の保存」型トークンとみなされています。

本質的な価値を持たない法定通貨や商品と同じように、エコシステムに受容されること、多くの人から信頼されることこそが、「価値の保存」型コインの核となります。

価値算定においては、地球上に存在する「価値の保存」型資産、例えば純金を参考にすることができます。

地金1オンスの値段を1300ドル(約15万円)とすると、世界に存在する金の合計価値はおよそ8兆ドル(約900兆円)と推定できます。

もしビットコインが金に代わる価値の保存手段となったら、という大胆な想定をしてみましょう。ビットコインが発行上限量に達した時、21万枚8兆ドルの価値を持つわけですから、ビットコイン一枚あたりの価値は38万ドル(約4200万円)となります。

さすがに1BTC=4200万円は非現実的ですね…

なお、金や原油などのコモディティ商品にペッグされているトークンはこの発想に近いのではと思いがちですが、1トークン=ロンドン金市場の金1オンス分の価格、というように一定の量にペッグされているケースがほとんどです。

貨幣数量説

 

マクロ経済学における貨幣数量説のフィッシャーの交換方程式の考え方を、トークンの価値算定に当てはめます。

たとえば、価格200円(P)の商品を100個(Q)生産・取引すると、取引額(PQ)は20,000円となります。ここに貨幣が1000円玉5枚の5000円分(M)ある場合、この5000円が4回(V)使われると、取引が成立します。

フィッシャーの交換方程式(MV=PQ)は、「5000円×4回=200円×100個」となり、「ある期間中に取引に使われる貨幣流通量」と「財貨の取引額」とが等しいことを表します。

よって、「貨幣供給量(M)が増えると左辺が、そして右辺も大きくなるため、取引量/生産量(Q)が一定とすると価格/物価(P)が上がる、つまりインフレが起こる、という関係が導かれます。実際はもっと複雑ですが、この理論が量的緩和政策の支柱にもなっています。

ではトークンの世界ではどうでしょうか。サービス価格(P)とサービス利用回数(Q)の値が一定である場合、流通速度(V)が小さいほど、M(時価総額)が大きくなります。この時、Mを供給枚数で割ることで算出できるトークンの価値も上がる、ということになります。

この理論によると、エコシステムの中での消費量よりも多くのトークンをユーザーにホールドさせるインセンティブ設計が、トークンの価値向上のためには重要ということになります。長期投資や貯蓄目的の他にも、PoS適切なトークンの焼却・発行メカニズムなど、流通速度(V)を低く抑える設計を取り入れることもできます。

ただし、貨幣数量説による価値算定には以下のような欠点もあります:

  • MV=PQの各要素を正確に定義・計測することが難しい
    • 流通速度(V)を正確に定義・測定するのが難しい:これは従来の貨幣数量説でも指摘されている点です。特に、特定のサービスが存在しないブロックチェーンインフラ系のプロジェクトでは尚更だと思います。
    • 時価総額(M)に、ロックアップ分や未発行分を反映すべきか否かの判断が難しい:こちらは発表されているToken Metricsを適宜反映させることで解決できそうです。
  • 各要素同士が独立ではなく相関している点を無視してしまっている

なお、貨幣数量説についてはGunosyさんのブログが分かりやすいです。ぜひ併せてご覧ください!

クリプトJカーブ理論

 

トークンの流通速度理論に、現在のトークン価値によって決まる「現在価値(Current Utility Value)」と、将来のトークン価値を現在価値に割り引いた「割引現在価値(Discounted Expected Utility Value)」の概念を導入した説です。

例えばあるDappにおいて、限られた機能しか存在しない現在のサービス価格(P)・利用回数(Q)・流通速度(V)だけでなく、将来ホワイトペーパー通りに全ての機能が実装された時のP・Q・Vも、現在の価格に影響しているだろう、という考えです。

クリプトJカーブ理論の「Jカーブ」は、プロジェクト進行過程における、現在価値(CUV)と割引現在価値(DEUV)のトークン価格に対する影響力の変化を象徴しています。

 

トークンが発行されたばかりの時は、技術面の進歩や将来の価格上昇に対する保有者の期待が大きいため、現在価値よりは割引現在価値(DEUV)に重きをおいた算定がより適しています。一方、技術面での進捗が滞ると、いわゆる「イナゴ」と呼ばれる層の保有者の熱狂は冷めるため、ディベロッパーや早期サポーターにとっての現在価値(CUV)に重きを置いた算定が適しています。チームがその停滞を乗り越え、トークンがより広く受容されるようになると、現在価値(CUV)は一気に上昇します。それに伴い、プロジェクト進捗や将来の価格上昇に対する期待が回復するため、現在割引価値(DEUV)の比重が戻ってきます。最終的に安定した状態になると、現在価値(CUV)がトークン価格を左右します。

ただし、クリプトJカーブ理論も貨幣数量説と同様、トークンの流通速度(V)の算定の難しさ、そして各要素同士の相関関係の無視、という欠点があります。

現在割引価値(DEUV)の割引率の算出方法をどうするのか、という疑問も残ります。

なお、GunosyさんのブログにもクリプトJカーブ理論を解説した記事があります。ぜひ併せてご覧ください!

対トランザクションボリュームネットワーク価値(NVT)理論

 

ネットワーク価値(時価総額)日あたりオンチェーントランザクションボリュームとを比べることで、時価総額と対応するトークン価格が過大評価/過小評価されているか判断する方法です。PER(=時価総額/当期純利益)によって株価が割安か割高かを判断するのと同じ発想です。

このモデルはビットコインのような、オンチェーンのトランザクションボリュームがユーザーにとってのユーティリティーと乖離しないトークンにはよく当てはまります。しかし、オフチェーンでのトランザクションが発生する場合は、NVTを正確に算出することができません。一方、DashのようなStakeによる報酬があるトークンでは、分母が実態以上に大きくなりNVTが過小評価されるため、トランザクションボリュームからStakeされた分を差し引く必要があります。

ただし、トランザクションボリュームは価格(時価総額)変動に後から追随する傾向にあるため、結局NVTは正確な指標とは言い難いと考えられます。 

また、何をもって割安/割高とするかの判断基準が明らかにされていませんが、株価の割安/割高を判断するのに類似他社のPERとの比較を行うように、類似プロジェクトのNVTと比較するのは可能そうです。(後述)

※原文では5つ目に「1日あたりアクティブアドレス数」という指標を提案していますが、価値算定理論というよりは理論を補完しうる指標に近かったため、ここでは割愛しました。

新たな価値算定理論の可能性

 

では、上述の四つの理論を補完しうる指標や、それらを超える新たな理論は存在するのでしょうか。以下では、トークン価値算定理論の発展余地について検討していきたいと思います。

  1. 株式資本コスト算定理論(CAPM/ Capital Asset Pricing Model)
  2. DCF(割引キャッシュフロー)法
  3. マルチプル法
  4. 新興国経済としてのトークンエコノミー

株式資本コスト算定理論(CAPM/ Capital Asset Pricing Model)

 

株式資本コスト(投資家が株式投資に期待する収益率)、特にの算定理論をトークンの価値算定に応用できるのではないか、という説です。

株式資本コストの算定方法は、現在最も一般的に用いられているシャープの理論ファーマ-フレンチの3ファクターモデルなど複数存在しますが、ここではカーハートの4ファクターモデルを参考にします。

 

なんだか難しい式が出てきましたが、丁寧に解説するのでご安心ください。笑い

左辺は「銀行の預貯金や国債などリスクが低い資産に比べ、この株はどれくらい高いリターンを見込めるのか」という差分を表しています。

4ファクターモデルの左辺

 

Riある特定の銘柄の株主資本コスト(ある資産について将来にわたる運用により獲得することができる平均的な収益率)

rリスクフリーレート(金融機関への預貯金や国債など元本が保証されていてリスクがほぼ無い資産から得られるリターンの割合)

 

そして、この差分を以下四つの要素を考慮して求めてみよう、というのが4ファクターモデルです。

4ファクターモデルの右辺

 

Rm-r株式市場全体の期待収益率リスクフリーレートとの差分。

 

SMB時価総額に対するリスクファクター。時価総額が小さい銘柄は大きい銘柄に比べ売買による価格変動が大きくなりやすいという意味で、リスクが大きくなる。

 

HML簿価時価比率に対するリスクファクター。簿価時価比率は「簿価(会計帳簿に記録された資産・負債の評価額)÷時価総額」で算出され、PBR(株価純資産倍率)の逆数。時価総額が小さい、つまり簿価時価比率が高い企業は利益が小さい傾向にあり、リスクが大きくなることが実証されている。

 

MOMモメンタム効果に対するリスクファクター。モメンタム効果とは、過去に収益率が良かった株式はそれ以降も収益率が良く、逆に過去に収益率が悪かった株式はそれ以降も収益率が悪くなるという現象。よって過去に収益率が悪かった株式はリスクが大きいと見なされる。

 

各要素に付いている係数β:rM、SMB, HML, MOMに対する各株式の感応度

 

トークンの場合は、Rm-r(仮想通貨市場全体の期待収益率とリスクフリーレートとの差分)、SMB(時価総額に対するリスクファクター)、MOM(モメンタム効果に対するリスクファクター)はそのまま当てはめることができそうですが、簿価が存在しないためにHMLを算出するのはほぼ不可能でしょう。

他にも以下の要素のリスクファクターを当てはめることもできそうです:

  • 取引または貯蓄にあたってののコスト (取引所の使いやすさや流動性、ウォレットの質)
  • コミュニティの規模と強さ
  • NVTの値
  • FOMO(Fear Of Missiong Out/ 材料を見逃すことへの恐れや、すぐに値下がりするのでは無いかという懸念などで、早期に利益を確定してしまうこと)が起こる可能性
  • 国際政治・経済情勢

DCF(割引キャッシュフロー)法

 

DCF法は事業が生み出す期待キャッシュフロー割引率で割引いて企業価値を算出する方法です。

ユーティリティートークンへの投資は一般的に、キャッシュフローを生んだりそこから配当を得る権利を付与したりするものではないため、DCFはユーティリティートークンの価値算定には適切ではありません。ただし、事業が生み出す収益の配当を約束するセキュリティートークンに対しては応用可能です。

ただし、ユーティリティートークンでも、NEOVeChainなど、Stakeによる報酬が発生するトークンマスターノード銘柄は、事業がキャッシュフローを生みだす訳ではないとは言え、将来的に受け取ることのできる報酬の合計を割引くという形で価値算定ができそうです。

類似企業比準法

 

株式価値算定の世界では、同業他社の各種マルチプル(特定の財務指標に対し、企業価値や株式時価総額の相対価値を表す指標)が、検討対象企業の株式価値算定の参考とされてきました。

同じアプローチをトークンに当てはめるとどうなるでしょうか?

EV(企業価値)/EBITDA(営業利益に減価償却費を足し戻したもの)倍率EV/売上高倍率、PER(一株あたり当期純利益)等の指標の代わりに、NVT等の指標を用い、類似トークン内での中央値を算出、調査対象であるトークンに当てはめて価値を算出することができそうです。

新興国経済としてのトークンエコノミー

 

Chris BurniskeとJoel Monegroは、Placeholder VC名義で発表した論文の中で、トークンの価値算定基準が新興国通貨の評価基準に似ていることを指摘しました。

仮想通貨において、コンセンサスアルゴリズムは国家憲法、コミュニティは有権者、コアの開発者はコミュニティにより承認されたコードを実行する行政機関、トークンは自国通貨に例えることができます。投資家は上述の論点について他国(他プロジェクト)の通貨(トークン)と比較した上でその通貨(トークン)に投資していると言えるでしょう。

国家に対してもトークンエコノミーに対しても、投資家は健全な金融政策適切なガバナンスクリーンな政治平等性生産性といったことを望みます。

新興国市場への投資検討の指標となるファンダメンタル指数を参考に、「トークンマクロ経済指標」なるものをエコノミストと共に開発すると面白いかもしれません。このファンダメンタル指標には、トークン版ジニ係数や、金融政策への評価ガバナンスへの評価腐敗認識指数など様々な指標を含めることができそうです。

まとめ

 

いかがでしたでしょうか?

これまで見て来たように様々なアプローチのトークン価値算定理論が存在しますが、

ブロックチェーンレイヤーのプロジェクト/トークンであれば数ある類似トークンのNVTを比較してみる、アプリケーションレイヤーのプロジェクト/トークンであれば明確なサービスがあるので貨幣数量説の式を当てはてみる、セキュリティートークンであれば事業収益からの配当があるのでDCF法を試してみる、など、

トークンの性質によってモデルを使い分けると、実態に即した価値算定ができるのではないでしょうか。

新たに有力な価値算定理論を思いついた方はぜひご一報ください!

 

それでは今日はこの辺で!

 

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